2014年02月28日

「食欲不振」「吐き気・嘔吐」「食事で困った」率はいずれも半数に上るが 「栄養補給を相談」は4人に1人のみ ~栄養問題を我慢しがちな抗がん剤治療患者~

株式会社QLife   http://www.qlife.co.jp/

月600万人が利用する日本最大級の病院検索サイト、医薬品検索サイト、医療情報サイトを運営する総合医療メディア会社の株式会社
QLife(キューライフ/本社:東京都千代田区、代表取締役:山内善行)は、抗がん剤治療経験者500名に栄養補給に関する調査を行った。調査は2014年1月12~21日にインターネットで行われた。
それによると、半数以上が「食欲不振」「吐気・嘔吐」など食事・栄養に関する副作用に見舞われ、半数が「食事に困った」経験を持つが、医療者に栄養補給を相談したのは4人に1人にとどまることが分かった。相談せずに我慢する理由は、「副作用だから仕方がない」「薬を止めれば食欲は戻る」「そんな質問をしても回答は得られないと思う」などが代表的。がん研有明病院
消化器外科胃担当部長・栄養管理部部長の比企直樹先生は、「治療継続に重要なのは患者さんの体力が良好な状態にあること。手術や化学療法で生じる体重減少を我慢させるのではなく、予防・改善策を講ずるべき」などとコメントした。

<主な結果>
■「食欲不振」も「吐気・嘔吐」も、抗がん剤治療患者の半数以上に出現
■「食事で困った」経験は、約半数
■「栄養補給の指導あった」は4人に1人で、うち「毎日実践した」のは約4割
■「医療者に栄養補給を相談したことある」のは4人に1人
■「栄養剤や栄養補助飲料を使った」経験は、16%
■「抗がん剤のためなら食欲不振や体重減少も我慢」は4人に3人

抗がん剤治療を行ったがん患者の多くが、治療中の食欲不振や体重減少を我慢し、栄養面の指導を受けながらも上手く実践できず、また食事にも困っていた。しかしながら、医療者に相談したことがある患者は約4人に1人、医療者から処方または勧められた栄養剤や栄養補助飲料を使ったことがあるのは約6人に1人に留まった。多くの患者が「食事で最低限の栄養補給が行えている」「栄養剤は食事がままならない人のためのもの」と考えており、積極的に栄養強化しようとはしていない様子が伺える。
なお、消化器系がん(大腸・直腸、すい臓、十二指腸・小腸、胃、食道、咽頭・喉頭)の症例では、低栄養を伴う頻度が高いため、特に栄養管理が重要とされる。実際、消化器系がん患者の回答と他とを比較すると、「医療者に相談」「栄養剤を使った」率がどちらも1.7倍高かった。しかしながら栄養指導の実践度合いはほとんど変わらなかったため、患者自身による自律的な栄養管理では難しい面があることが伺える。

<調査結果について>
「栄養剤などの摂取は“守り”ではなく、“攻め”の治療」
がん研究会有明病院 消化器外科胃担当部長・栄養管理部部長
比企直樹先生

まだまだ栄養剤の活用意義が患者さんに理解されていないと思います。抗がん剤の副作用で絶食状態になったり、食べやすいものに食事内容が偏ってしまいがちなので、栄養を補うことは重要です。不足分を補うという意味だけでなく、例えば、一部の栄養補助飲料に含まれるEPAにはがんの炎症を抑える働きがあることが分かっています。栄養剤というと、多くの方はサプリメントやドリンク剤を想像すると思いますが、私たち医師が選択するものはエビデンスに基づき病態別に使い分けされるものです。一方、体重減少に対する意識は残念ながら医療従事者にもまだまだ低いのではないかと考えています。治療継続に重要なのは患者さんの体力が良好な状態にあることです。手術や化学療法で生じる体重減少を我慢させるのではなく、予防・改善策を講ずるべきです。“足りない部分を補う”守りの栄養補給ではなく、“がん治療を後押しする”攻めの栄養補給が患者さんの予後を高める有効な1手段であることを、もっと知って欲しいですね。

がん研究会有明病院 消化器外科胃担当部長・栄養部長 比企直樹 先生
北里大学医学部卒。東京大学附属病院分院、東京大学大学院、癌研究会有明病院などを経て、現在、がん研究会有明病院 消化器外科胃担当部長・栄養管理部部長。
日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本胃癌学会幹事など。