2012年03月29日

東京工芸大学、ナチュラルユーザーインターフェースに関する調査

学校法人東京工芸大学   http://www.t-kougei.ac.jp/

8割強の家庭がタッチパネル製品を保有
タッチパネル化で「操作方法で困ることが減った」35.5%、ITリテラシーの低い層でも32.2%

家庭用体感型ゲームのプレイ経験率7割弱、「Kinect」のプレイ経験率6.7%
体感型ゲームは「良い運動になる」 プレイ経験者で8割強、女性のプレイ経験者では9割
「一人でも楽しめる体感型ゲームをプレイしたい」48.5%

音声対話システムを採用して欲しい製品 1位「テレビ」 2位「カーナビ」 3位「パソコン」
「自動車」に音声対話システムを採用して欲しい 30代男性の5割半
ユーザーの期待は「多機能端末に対話アシスト」、「リモコン代わりにジェスチャー認識」

ナチュラルユーザーインターフェース(NUI)普及で「IT機器の操作が簡単になる」7割
「NUI採用のパソコンを使いたい」5割、40代で5割半

NUIが役立つと思う用途・産業は? 1位「シニア向けIT機器」 2位「福祉介護現場」 3位「医療現場」
今後最も実現を期待するインターフェースは「音声対話」、次点で「触れる3D」

東京工芸大学(所在地:東京都中野区・神奈川県厚木市/学長:若尾 真一郎)は、2012年2月15日~2月22日の8日間、全国の15歳から49歳の男女を対象に、「ナチュラルユーザーインターフェースに関する調査」をモバイルリサーチ(携帯電話によるインターネットリサーチ)で実施、1,000名(男女各500名、10代・20代・30代・40代各250名)の有効サンプルを集計しました。(調査協力会社:ネットエイジア株式会社)
いまや日常生活に欠かせないツールとなった携帯電話、パソコンなどのIT機器ですが、高度化・多機能化が進むことで操作が複雑になり、利便性が失われていないでしょうか。ユーザーインターフェースの研究を行う東京工芸大学では、昨今普及が進む“タッチパネル”や“ジェスチャー認識”、“音声対話システム”といった、人間の五感や人間が自然に行う動作によって機械を操作する方法(=ナチュラルユーザーインターフェース)が、複雑化するIT機器を誰でも簡単に利用できるものに変えることが出来るのか、その可能性を探りました。

◆ 8割強の家庭がタッチパネル製品を保有
◆ タッチパネル操作のゲーム機所有率49.6%、10代は70.4%
◆ タッチパネル操作のカーナビ所有率35.1%、子どもがいる家庭では58.0%
◆ タッチパネル化で「操作方法で困ることが減った」35.5%、ITリテラシーの低い層でも32.2%
従来のボタン操作よりも“直感的操作が可能”と謳われて売り出されることの多いタッチパネル搭載製品は、どの程度家庭に普及しているのでしょうか。
全回答者(1,000名:男女各500名、10代・20代・30代・40代各250名)に対し、持っている(または家庭にある)タッチパネル搭載製品を複数回答形式で質問したところ、「ゲーム機(ニンテンドーDSシリーズ、PSVitaなど)」の所有率が最も高く49.6%、次いで「カーナビ」が35.1%、2割台で「携帯電話:スマートフォン以外(N-02D、F-01C、AQUOSケータイFULLTOU
CHなど)」(24.6%)や「デジカメ」(22.9%)、「音楽プレイヤー(iPodtouch、iPodnano第6世代、WALKMAN Zシリーズなど)」(22.2%)が続きました。「タッチパネル搭載製品は持っていない」との回答は16.2%となり、8割強の家庭ではなんらかのタッチパネル搭載製品を所有していることがわかりました。
タッチパネル搭載製品の所有率を年代別にみると、10代は「ゲーム機」が70.4%、「電子辞書」が43.2%と娯楽用機器や学習機器で所有率が高くなりました。また、同居している子どもがいる家庭では、「カーナビ」が58.0%と、同居している子どもがいない家庭(25.9%)よりも所有率が高くなったほか、「デジカメ」(32.9%)や「ビデオカメラ」(27.6%)などの記録用機器や「電子レンジ・オーブンレンジ」(18.5%)や「冷蔵庫」(17.1%)などの台所用家電製品の所有率も高くなりました。各家庭で使用頻度が高いであろう製品からタッチパネル化が進行しているようです。

家庭用の製品以外でも、ATMやカラオケのリモコン、自動販売機など様々な端末にタッチパネルの採用が進んでいますが、“使い勝手”は従来のボタンで操作する端末に比べて向上したのでしょうか。全回答者(1,000名)に対し、タッチパネルの使い勝手が従来のボタン操作と比較して良くなったかを、以下の項目毎にどの程度あてはまるか質問しました。
[項目1] 操作方法で困ることが減った
[項目2] 誤操作・誤入力(意図したとおりに動かないこと)が減った
[項目3] すぐに操作に慣れた
[項目4] 操作が楽しくなった
[項目5] 操作のストレスが軽減された
操作方法で困ることが減ったかどうかの評価を尋ねた[項目1]では、『あてはまる』(「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)が35.5%、『あてはまらない』(「全くあてはまらない」+「あまりあてはまらない」)が15.4%となりました。ボタン操作よりもタッチパネルの方が操作方法で困ることが減った、と感じている方が多くなりましたが、両者の間に大きな差は感じないとする選択肢の「どちらともいえない(ボタン操作と同程度)」が43.0%で最多回答となりました。
また、IT機器の習熟度別(どの程度IT機器が使いこせているかに対する回答別)に比較すると、習熟度が高い層では『あてはまる』が41.2%、低い層では『あてはまる』が32.2%となりました。IT機器の習熟度が高い層ほど操作方法で困ることが減った、との評価が高くなりましたが、習熟度の低い層でも3割強は困ることが減ったと感じているようです。
誤操作の頻度が減ったかどうかの評価を尋ねた[項目2]では、『あてはまる』が24.2%であるのに対し、『あてはまらない』35.8%、「どちらともいえない(ボタン操作と同程度)」34.0%となりました。触感による操作のフィードバックに乏しいタッチパネルは、誤操作の観点からすると、ボタン操作よりも劣っていると評価されているようです。
習熟の早さと操作すること自体の楽しさについて尋ねた[項目3]と[項目4]では、タッチパネルの方が優れているとの評価になり、[項目3]【すぐに操作に慣れた】で『あてはまる』が57.8%、[項目4]【操作が楽しくなった】で『あてはまる』が44.8%となりました。
タッチパネル化によって操作ストレスが軽減したかどうかについて尋ねた[項目5]では評価が分かれ、『あてはまる』が26.3%、『あてはまらない』が25.4%とほぼ同率になりました。
IT機器の習熟度別に比較すると、習熟度の高い層では『あてはまる』34.4%、『あてはまらない』28.6%となり、操作ストレスが軽減されたとの回答が多数派となりました。対して、習熟度の低い層では『あてはまる』17.1%、『あてはまらない』28.9%と、操作ストレスは軽減されないとの回答が多数派になりました。タッチパネル操作はIT機器の習熟度が低い層にとって、操作ストレスの軽減に繋がらないことが多いようです。

◆ 家庭用体感型ゲームのプレイ経験率7割弱、10代は9割、小中学生の親は8割弱
◆ 「Kinect」のプレイ経験率6.7%
◆ 体感型ゲームは「良い運動になる」 プレイ経験者で8割強、女性のプレイ経験者では9割
◆ 体感型ゲーム未経験者「遊ぶまでに覚えることが多そう」48.5%
◆ 「一人でも楽しめる体感型ゲームをプレイしたい」48.5%
次に、身振り手振りで端末を操作することができる“ジェスチャー認識”の例として、家庭用体感型ゲームを取り上げ、そのプレイ経験や印象についての質問を行いました。
全回答者(1,000名)に対し、【Wii】【PS Move】【Kinect】それぞれのプレイ経験を質問したところ、【Wii】の『プレイ経験率』(「何度もプレイしたことがある」+「数回プレイしたことがある」)は65.9%、【PS Move】は7.4%、【Kinect】は6.7%となり、【Wii】【PS Move】【Kinect】のいずれか家庭用体感型ゲームの『プレイ経験率』は67.4%となりました。
年代別にみると、10代の家庭用体感型ゲームの『プレイ経験率』は89.2%と約9割となったほか、家族構成別では子どもがいる家庭、特に中学生の子どもがいる家庭(78.7%)や小学生の子どもがいる家庭(79.2%)の『プレイ経験率』が高くなりました。子どもたち自身だけでなく、子どもと同居している親も一緒に体感型ゲームをプレイしている様子が窺えました。

続いて、全回答者(1,000名)に体感型ゲームについて説明したうえで、体感型ゲームの印象として以下の【A】と【B】を提示し、どちらに近いかを質問しました。
《ジェスチャー認識について》
[項目1]
【A】:楽しい(楽しそう)  【B】:わずらわしい(わずらわしそう)
[項目2]
【A】:良い運動になる(なりそう) 【B】:疲れる(疲れそう)
[項目3]
【A】:気軽に遊べる(遊べそう) 【B】:遊ぶまでに覚えることが多い(多そう)
《体感型ゲームでプレイしたいゲームについて》
[項目4]
【A】:一人でも楽しめるゲーム 【B】:大人数で盛り上がれるゲーム
[項目5]
【A】:手軽に遊べるゲーム 【B】:難易度が高く、やり込めるゲーム
操作の楽しさについて尋ねた[項目1]では、『【A】に近い(計)』(「【A】に近い」+「どちらかといえば【A】に近い」)が74.7%、『【B】に近い(計)』(「【B】に近い」+「どちらかと言えば【B】に近い」)が25.3%となり、楽しい・楽しそうとの意見が多数派となりました。
家庭用体感型ゲームのプレイ経験別にみると、プレイ経験者では『【A】に近い(計)』が80.5%、プレイ未経験者では62.6%となりました。体感型ゲームを体験したことのある経験者からの評価が高くなりましたが、プレイ未経験者でも楽しそうとの印象が6割強で多数派となりました。
体を使ってゲームをすることについての印象を尋ねた[項目2]では、『【A】に近い(計)』が78.5%となりました。体感型ゲームのプレイ経験者では『【A】に近い(計)』が82.8%、プレイ未経験者でも69.6%と7割がプラスの印象を持っているようです。特に女性は良い運動になる・なりそうとの意見が多く、プレイ経験者の女性は『【A】に近い(計)』が89.3%となりました。
ジェスチャー認識を用いた操作方法を覚えることに障壁を感じるかどうかを尋ねた[項目3]では、『【A】に近い(計)』が67.4%となり、気軽に遊べる・遊べそうとの意見が多数派となりました。プレイ未経験者では『【A】に近い(計)』が51.5%となり、『【B】に近い(計)』(48.5%)と意見を二分しましたが、プレイ経験者では『【A】に近い(計)』が75.1%となりました。ジェスチャー認識で操作するゲームを始めるにあたり、体感型ゲーム未経験者の半数近くは遊ぶまでに覚えることが多そう、と障壁を感じているようですが、体感型ゲーム経験者からの評価では “気軽に遊べる”が7割半に達しました。
体感型ゲームでプレイしたいゲームについて、プレイ人数の観点から尋ねた[項目4]では、『【A】に近い(計)』(48.5%)と『【B】に近い(計)』(51.5%)で意見が分かれました。年代別にみると、低い年代ほど大人数で盛り上がれるゲームをプレイしたいと考えている傾向があり、10代では『【B】に近い(計)』が57.2%となりました。
体感型ゲームに“やりこみ要素”を求めるかどうかを尋ねた[項目5]では、『【A】に近い(計)』が81.6%と、手軽に遊びたいとの意見が8割強となりました。ジェスチャー認識で遊ぶゲームでは、“ライトなゲーム”が好まれるようです。

◆ ジェスチャー認識を採用して欲しい製品 1位「照明」 2位「ゲーム機」 3位「パソコン」
◆ 音声対話システムを採用して欲しい製品 1位「テレビ」 2位「カーナビ」 3位「パソコン」、
30代男性は「自動車」5割半、 20代女性は「デジカメ」3割 
◆ ユーザーの期待は「多機能端末に対話アシスト」、「リモコン代わりにジェスチャー認識」
昨今、ジェスチャー認識技術(例:Microsoft社のKinect)や、単純な音声入力だけでなく、対話で端末の操作をアシスト・実行する音声対話システム(例:Apple社のSiriやNTTドコモ社のしゃべってコンシェル)が注目されていますが、消費者はこれらの技術・インターフェースの発展にどのような期待を寄せているのでしょうか。
全回答者(1,000名)に対し、身振り手振りで端末を操作することのできる【ジェスチャー認識】の採用を期待する製品はなにかを複数回答形式で質問したところ、「照明」が44.0%で最も高く、次いで「ゲーム機」(※1)が40.9%、「パソコン」が33.7%、「テレビ・レコーダー」が33.5%、「エアコン」が29.2%、「自動車」25.9%で続きました。従来からリモコンやコントローラーなどを使って離れた場所から操作することのある製品が上位回答に挙がったのに対し、直接手を触れて操作することが多い「タブレット端末」(12.0%)や「電子レンジ・オーブンレンジ」(9.9%)、「洗濯機」(9.4%)などの製品は下位回答となりました。
年代別に比較すると、年代が低い層は「ゲーム機」(10代52.0%、20代41.6%)や「音楽プレイヤー」(10代33.6%、20代25.6%)といった娯楽用機器や「パソコン」(10代38.0%、20代38.4%)が高くなり、年代が高い層は「照明」(30代48.8%、40代50.0%)や「エアコン」(30代38.0%、40代32.0%)といった住宅家電や「カーナビ」(30代25.2%、40代34.0%)が高くなりました。
※1:【ジェスチャー認識】の説明にて、 採用例として“体感型ゲーム”を例示しています。

続いて、全回答者(1,000名)に対し、単純な音声による操作ではなく、自然な対話形式で端末を操作する【音声対話システム】について説明を行ったうえで、採用を期待する製品はなにかを複数回答形式で質問したところ、「テレビ・レコーダー」(※2)が53.8%、「カーナビ」が52.0%と、それぞれ5割超の回答を得ました。次いで4割台の回答で「パソコン」(44.6%)や「エアコン」(42.1%)、「照明」(41.0%)、「自動車」(40.5%)が、続いて3割台の回答で「スマートフォン・携帯電話」(35.0%)、「ゲーム機」(32.3%)、「音楽プレイヤー」(30.8%)が挙がりました。エアコンや照明などの従来からリモコンなどで離れた場所から操作することのある製品のほかに、「パソコン」や「カーナビ」「スマートフォン・携帯電話」「音楽プレイヤー」など、インターネットや端末内部にある情報の検索・利用を行う製品が上位回答に挙がりました。
性年代別に比較すると、30代・40代の男性は「カーナビ」(30代男性61.6%、40代男性59.2%)、「自動車」(30代男性54.4%、40代男性50.4%)が高く、20代・30代の女性は「デジカメ」(20代女性29.6%、30代女性20.8%)、10代女性は「電子辞書」(32.8%)、40代女性は「掃除機」(28.0%)が、他の層と比べ高くなりました。自然な対話形式で操作したい製品は、愛着や思い入れが強いものや使用頻度が高いもの、使用感を高めたいものではないかと推察されます。
また、子どもと同居している母親では、「エアコン」(48.8%)や「照明」(48.8%)などの住宅家電や、「洗濯機」(35.6%)や「電子レンジ・オーブンレンジ」(35.0%)などの家事に用いる生活家電への採用を期待する意見が多くなりました。
※2【音声対話システム】の説明にて、音声対話システムが「テレビ・レコーダー」に採用された場合の操作方法を例示しています。

【ジェスチャー認識】と【音声対話システム】の採用を期待する製品の回答を併せてみると、「テレビ・レコーダー」、「パソコン」、「照明」などの製品は、双方の操作方法で上位回答となり、それらの製品に新しい操作方法(インターフェース)を採用して欲しいとの期待が窺えました。
また、【ジェスチャー認識】と【音声対話システム】の採用が期待されている製品の傾向を比較すると、「カーナビ」や「パソコン」、「スマートフォン・携帯電話」など、多機能化が進む製品は【音声対話システム】への期待が相対的に高く、「ゲーム機」や「楽器」、「ラジコン」といった娯楽用の製品については【ジェスチャー認識】への期待が相対的に高くなりました。

◆ NUI普及で「IT機器の操作が簡単になる」7割、「IT機器の活用用途が広まる」8割弱
◆ 「NUI採用のパソコンを使いたい」5割、40代で5割半
◆ NUIが役立つと思う用途・産業は? 1位「シニア向けIT機器」 2位「福祉介護現場」 3位「医療現場」
◆ 今後最も実現を期待するインターフェースは「音声対話」、次点で「触れる3D」、女性が最も期待するインターフェースは「音声対話による操作」4割
タッチパネルやジェスチャー認識、音声対話システムなどの、人間の五感や人間が自然に行う動作による操作方法(=ナチュラルユーザーインターフェース)は、多機能化・高度化が進む家電製品や情報端末を “誰でも簡単に取り扱える”ものにするために役立つのでしょうか。
全回答者(1,000名)に対し、ナチュラルユーザーインターフェース(以下、NUI)についての説明を行ったうえで、NUIを利用した製品が世の中に広まると、世の中や回答者自身に変化があると思うかを以下の項目毎に質問しました。
《世の中の変化について》
[項目1] 誰でも簡単にIT機器を利用できるようになる
[項目2] IT機器の用途が広まる
《あなた自身について》
[項目3] (キーボードやマウス操作ではなく)NUIが採用されたパソコンを使いたい
[項目4] 生活が豊かになる
NUIによってIT機器の操作が誰にとっても簡単になると思うかを尋ねた[項目1]では、『そう思う』(「非常にそう思う」+「まあそう思う」)が69.5%となりました。人間の五感を使った操作方法は複雑化するIT機器と利用者の間の垣根を取り去るのに役立つと考えられているようです。
また、既にタッチパネルやジェスチャー認識などの操作方法を体験したことのある方ほど『そう思う』とする割合が高くなり、スマートフォンを持っている方では『そう思う』75.5%、家庭用体感型ゲームのプレイ経験者では73.1%となりました。
NUIによってIT機器がより広い用途で活用されると思うかを尋ねた[項目2]では、『そう思う』が78.4%となりました。
また、体感型ゲームの経験者、特にコントローラーを持たなくても操作が可能なKinectのプレイ経験者では、『そう思う』が高く94.0%となりました。今年の2月にMicrosoft社からSDK(ソフトウェア開発キット、Kinect for Windows SDK)が公開され、様々な分野への応用が期待されているKinectですが、そのプレイ経験者は“NUIの普及によってIT機器がより広い用途で活用されるようになる”と予感しているようです。
NUIが搭載されたパソコンが登場した場合、利用したいと思うかを尋ねた[項目3]では『そう思う』が50.9%、『そう思わない』(「全くそう思わない」+「あまりそう思わない」)が41.3%となりました。
年代別にみると、高い年代ほど『そう思う』率が高くなり、30代で51.6%、40代で55.6%となりました。
NUIによって生活が豊かになるほどの変化があると思うかを尋ねた[項目4]では、『そう思う』が48.7%、『そう思わない』が41.1%となりました。5割弱の方はNUIが世の中に広まることで自身の生活が豊かになる、と感じているようです。
また、タッチパネルによって操作ストレスが軽減した方(263名)は『そう思う』率が高く68.8%となりました。

続いて、NUIによって今よりもIT機器の用途が広がると思う方(784名)に対し、NUIを利用した製品がどんな用途で役に立つと思うかを複数回答形式で質問したところ、「高齢者向けのIT機器」が最も高く69.6%、僅差で「福祉・介護現場」が65.8%となりました。次いで、5割台では「医療現場」(59.2%)、「災害現場での救助活動」(54.1%)、4割台では「教育現場」(46.8%)、「危険物の処理」(45.9%)、「エンターテイメント産業」(43.4%)が続きました。NUIの活用が期待される分野は多岐に渡り、特にシニア向けのIT機器や、安全性や精密さ、清潔さが求められる福祉・医療現場への導入を期待する意見が上位回答になりました。
年代別にみると、10代は他年代よりも「教育現場」(50.0%)が高く、20代・30代では「エンターテイメント産業」(20代50.7%、30代50.5%)が、40代では「高齢者向けのIT機器」(78.6%)や「福祉・介護現場」(75.4%)、「危険物の処理」(56.7%)が高くなりました。

それでは、ユーザーから最も実現が期待されているインターフェースはなんでしょうか。
全回答者(1,000名)に対し、最も実現して欲しいと感じるコンピュータの操作方法はなにかを質問したところ、「音声対話システム」が最も高く33.6%、次いで「触れる3D映像で操作」が21.7%、脳波を読み取ることでコンピュータを操作する「ブレイン・マシン・インターフェース」が15.9%で続きました。
男女別にみると、女性は「音声対話システム」(40.4%)が、男性は「触れる3D映像で操作」(26.8%)がそれぞれ高くなりました。対話によって操作のアシストや実行をしてくれる音声対話システムは女性からの期待度が高く、MR(複合現実感)とジェスチャー認識の技術を組み合わせることによって実現が期待できる“触れる3D映像”を使った操作方法は男性からの期待度が高いようです。

※リサーチ結果は、下記URLでも公開しております。
http://www.t-kougei.ac.jp/guide/release/
 
東京工芸大学工学部コンピュータ応用学科准教授の荒井良徳(あらい よしのり)は、今回の調査結果について次のように述べています。
ナチュラルユーザーインターフェース(NUI)は、人感センサーによる自動ドアや照明点灯など身近で単純なものから大きく発展しようとし、主に画像認識系及び音声認識系等の研究分野の応用として盛んに研究されてきています。IT機器が家庭にも浸透し、これらの多機能化が進む一方で操作を複雑にしないことを主な目的としています。またエンターテイメント(娯楽)分野における新たなジャンルとしても期待されています。
今回の調査で、家庭用体感型ゲームの利用経験者は必ずしもまだ多くないなどNUI全般的に浸透率はまだ高くないことがわかりましたが、一方で期待の大きさも実感できた調査結果でした。ユーザー側としてNUIの教育現場での利用期待が大きいことはあまり知られていなかったと思いますし、ユーザーとして何を期待しどのようにイメージしているのかも分かる調査で、今後のこの分野の発展に大いに参考になる調査になっていると思います。
ちなみに認識システムの難しさの一つに誤認識への対応があります。100%確実な認識は特に自然な環境での利用では難しく、認識精度を上げる研究だけでなく、間違った時にどうするかの工夫等も重要です。これらが改善されればもっと多くのNUIの製品が身近になると思われます。またエージェント技術やAR(拡張現実感)などを応用したMR(複合現実感)との融合が今後の注目になろうことが今回の調査でも分かり、関連研究に携わるものとして大きなモチベーションや再考のきっかけを与えてくれる調査結果となりました。
便利・簡単・面白い等をキーワードとして増々NUIは発展し、楽しくワクワクするような身近な製品となって普及してくるのではないかと思われます。

■回答者への用語解説内容■
設問に以下の用語が登場した際に解説を行なっています。
・IT機器
IT機器とは、さまざまな情報にアクセスできる機械のことで、インターネットに接続されているパソコンやスマートフォン・携帯電話などのことです。
・タッチパネル
タッチパネルとは、指やペンで画面に直接触れることで、家電やコンピュータなどの操作を行うことができるもののことです。
・体感型ゲーム
体感型ゲームとは、従来型のボタン(十字キーやアナログスティック)操作ではなく、ジェスチャー認識を使って、実際に手を振ったりジャンプしたりして遊ぶゲームのことです。
・ジェスチャー認識
(体感型ゲームのように)身振り手振りで操作するジェスチャー認識は、様々な製品への応用が期待されています。
・音声対話システム
音声対話システムとは、機械を声で操作するためのシステムです。単純な単語による操作ではなく、以下の例のように、ユーザーと機械が対話を進めていくことで、情報の検索や操作を行います。
————————
(例)テレビ
あなた「今日の夜、映画やっている?」
テレビ「20時からホラー映画『○○○』が●チャンネルで放送されます。」
あなた「ホラーは苦手。アクション映画とかは?」
テレビ「23時からアクション映画『△△△』が▲チャンネルで放送されます。」
あなた「その時間には寝たいから見られないよ。」
テレビ「アクション映画『△△△』の録画をセットしますか。」
あなた「よろしく。」
テレビ「23時から ▲チャンネルの録画を予約しました。」
————————
・ナチュラルユーザーインターフェース
人間の自然な動作(身振り手振りや会話)でコンピュータを操作する方法(ジェスチャー認識や音声対話システムなど)を総称して、ナチュラルユーザーインターフェース(NUI)と呼びます。

本ニュースレターの内容の転載にあたりましては、「東京工芸大学調べ」と付記の上、ご使用くださいますよう、お願い申し上げます。

東京工芸大学 学事部広報課
担当 : 田川、林
電話 : 046-242-9600/ FAX 046-242-9638  
e-mail : university.pr@office.t-kougei.ac.jp

東京工芸大学は、1923年(大正12年)、当時メディアの最先端であった我が国最初の写真の専門学校として設立されました。近年、工学部と芸術学部の2学部からなる特色ある4年制大学として、我が国初のアニメーション学科を創設し、更に2007年4月には東日本初となるマンガ学科を増設するなど、常にメディア芸術・コンテンツ芸術の発展に先導的役割を果たしてきました。
現在は、「工学×芸術=∞(無限の可能性)」という考え方のもとで工学部と芸術学部の様々な連携教育及び活動を進めており、創造性とオリジナリティーあふれる人材を育成しています。

理事長・学長
学校法人東京工芸大学 理事長 岩居文雄(いわい ふみお)
東京工芸大学 学長  若尾真一郎(わかお しんいちろう)
所在地
法  人  本  部 東京都中野区本町2-9-5
中野キャンパス 東京都中野区本町2-9-5
厚木キャンパス 神奈川県厚木市飯山1583
ホームページ
http://www.t-kougei.ac.jp/

設置学部・大学院等 (学生数4,688名:2011年5月1日現在)
【工学部】
メディア画像学科、生命環境化学科、建築学科、コンピュータ応用学科、電子機械学科
【芸術学部】
写真学科、映像学科、デザイン学科、インタラクティブメディア学科、アニメーション学科、
ゲーム学科、マンガ学科
【大学院】
工学研究科、芸術学研究科