2012年11月29日

高齢期を迎えた団塊世代 食生活で健康寿命を延ばす

日清オイリオグループ株式会社   http://www.nisshin-oillio.com
日清オイリオグループ株式会社(社長:今村隆郎)は、トロミ調整食品などの高齢者・介護対応食品を製造・販売しております。
当社では高齢者の方と同居しているご家族や介護をしている方に知っていてほしい事柄について、専門家にインタビューを行い、その内容をとりまとめニュースレターとして情報発信しています。
今回は、先頃、厚生労働省により示された健康寿命と平均寿命のギャップを受けて、高齢者の栄養ケアと食生活に着目し、健康寿命を延ばすためのポイントなどについて紹介いたします。
 
高齢者人口23.3% 超高齢社会を迎えた日本
2011年の65歳以上の高齢者人口は過去最高の2,975万人(前年2,925万人)。
総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、23.3%(前年23.0%)と過去最高となり『超高齢社会』を迎えた我が国。その伸び率は勢いを増し、2060年には39.9%になると推計されています。
 
健康寿命と平均寿命 その差はおよそ10年
介護を受けたり寝たきりにならず、不自由なく健康な日常生活を送ることが可能な期間を示す「健康寿命」と、「平均寿命」との差は約10年。即ち、平均寿命までの10年間は何らかの身体の不調があることになります。その原因を探り、差を縮めるための過ごし方を見出すことは、超高齢社会を迎えた我が国にとって非常に重要な課題となっています。
 
厚生労働省では超高齢社会に伴う介護の必要な方の数を減らすために、様々な介護予防の施策を検討しています。今号では、介護マニュアルにおいて栄養改善の研究に携わっている高田和子先生に、調査研究から見えてきた現状を伺いしました。
 
生活習慣病対策だけでは対応できない
かつては成人病とも呼ばれた生活習慣病。その対策については、現在高齢期を迎えた65歳以上の方が中高年の時代から指導され続けています。しかし、その時代を過ごした方が高齢期を迎えた今、以前と変わらずに生活習慣病予防の食生活を続けることは、かえって悪影響を及ぼす場合があります。
人の老い方は、徐々に老いていく場合と、突然の病などを契機に自立度が悪くなり老いていく場合の、主に2つに分けられます。
徐々に老いていく中で、自然と食事量が減っている事に気付かないまま、生活習慣病予防を意識して食生活に気を付けると、太り気味の方以外は問題になります。食事の絶対量が減ると、必然的に必要な栄養素量も不足します。「油っぽい食事は避けよう」「卵は食べないようにしよう」などの食生活は、限られた食事量の中で必要な栄養素を確保できない(低栄養)可能性があります。健康を保つには適度な脂質も必要ですし、認知機能に関わるビタミンB群や鉄分を豊富に含む肉類や良質なたんぱく質源の卵も必要です。高齢者にとって、生活習慣病予防が必要なのか、食事の量を確保することが必要なのか、食事内容を切替えるタイミングを見極めることが重要です。
 
切替えのタイミング 見極める3つのポイント
食事内容を切替えるタイミングを見極めるポイントは3つあります。①食事が準備できているか②食事内容が適切か③食べられる状況か。見極めるためには、ご本人の自覚だけでなく、ご家族や周りの人の協力が必須となります。
“家族と同居をしているから安心”という訳でもありません。ご家族と同居している場合でも、日中は一人で過ごしている高齢者の方は大勢います。「高齢だから、食事量が減っても仕方がない」と諦めてしまうと、低栄養が深刻化する可能性もありますし、ご本人が食べている“つもり”になっているだけで、実は必要な栄養素が摂取できていない可能性も考えられます。まずは基本的な食生活の現状を把握することから始めましょう。
 
見えない高リスク者 チェックリストの活用を
在宅で生活されている高齢者では、低栄養のリスクが高い方を見つけ出すことが非常に困難です。デイサービスなどを利用していれば、施設のスタッフからアドバイスを受けることができますが、在宅の場合、食事の様子を専門家が直接、確認することが難しくなります。ご家族など食事を一緒にされる方がチェックリスト【表1】などを活用し、専門知識が無い方でも基本的なポイントをおさえられるような工夫が必要です。
 
口腔機能低下に対応した食事環境を
高齢者は加齢に伴い、口腔機能などの身体的機能が低下します。特に嚥下機能に関しては食事量が減少する原因の一つなので、機能低下に対して適切な食事環境を整備することが重要です。
 
1 食形態の工夫
“噛めなくなった”“飲み込めなくなった”などをきっかけに、通常の食事を細かく刻むことがありますが、必ずしもそれが適切な解決策とは言えません。噛む行為は、歯が無くても歯茎や舌で補えるので、野菜など柔らかくてつぶれるような物であれば、無理に刻む必要はありません。むしろ、飲み込み機能が低下している場合、刻んだ食事は口腔内でバラバラになり、素材によってはむせる原因にもなるため大変危険です。柔らかく調理するような工夫や、あんかけや市販のトロミ調整食品を利用して口の中でバラバラにならないような工夫をしましょう。
 
2 食事そのものの工夫
いわゆる介護食は、作る手間と時間がかかります。現在、市販の介護食の種類は年々増え続けており、それぞれの咀嚼嚥下機能レベルに対応した商品が多く揃っています。食欲が無いときや、体調を崩しているときは、介護食を利用するのも良いでしょう。
 
3 水分補給の工夫
飲み込み機能の低下や、トイレの失敗を気にして水分を摂りたがらない方は大勢います。しかし年齢と共にお手洗いを我慢しにくくなることは仕方ありません。特に高齢者にとって水分不足は命に関わります。デイサービスでは、2時間おきに水分を提供している施設もあるので、ご家庭でも頻繁な水分補給を心がけてください。飲み込み機能が低下しているのであればトロミ調整食品を利用する、トイレに間に合わないようであれば尿パッドの利用を検討するなど、介護する方もされる方もお互いに理解して、問題にあわせて対応しましょう。
 
健康寿命の延伸 社会参加がカギ
健康寿命を延ばすためには、ご自身やご家族が食事に気を付けることはもちろん、地域の活動に参加し、身体活動量を増やしたり、人とのコミュニケーションをとることも大切です。実際に静岡県の調査では、社会参加することが自立機能低下の防止になることが分かっています。また、近所付き合いがあれば、お互いに助け合うこともできるので、元気な時から気軽に協力し合える仲を築くことが理想的です。近所付き合いも少なく、助け合うのが難しい場合は、各自治体で介護予防教室などを頻繁に行っていますので、体調が良い時は積極的に参加し、コミュニティの形成を図ることも大切です。
介護をするご家族も24時間付き添い続けると身体と心が休まりません。デイサービスなどを上手く利用し、時には離れることも大切です。お互いにゆとりをもつことが良好な関係作りの一つになり、さらには健康寿命の延伸にもなります。
健康寿命から平均寿命までのおよそ10年間を1年でも短くするためには、このような社会参加が非常に重要であり、介護予防に繋がります。
 
お話を伺った専門家
髙田 和子(たかた かずこ)先生
独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室 室長
【ご経歴】
女子栄養大学 栄養学研究科修士課程修了
女子栄養大学助手、国立健康・栄養研究所 技術補助員、
科学技術庁科学技術特別研究員、長寿科学振興財団リサーチレジデントを経て1999年8月より国立健康・栄養研究所 健康増進研究部 主任研究員
2011年6月より現職
博士号(栄養学)、管理栄養士、健康運動指導士、日本体育協会公認スポーツ栄養士
 
【本件に関するお問合せ】
日清オイリオグループ株式会社 広報・IR部 電話:03-3206-5109
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