2013年02月26日

ボーカロイドに関する調査

学校法人東京工芸大学  
「好きな音楽はボカロ曲」10代女性で4割
 
ボカロ曲の魅力は「多様な曲がある」「無料で聴ける」「ボカロならではの表現」
 
初音ミクの認知率95.0%
“ポスト初音ミク”は「Megpoid」?「IA」?若年層で認知が広がる
初音ミクを知ったきっかけに年代差、30代は「TV」が4割強
 
気に入った無料コンテンツ制作者への少額寄附意向56.5%、ボカロ曲ファンでは77.6%
4人に1人がボカロ曲制作やDTMに「挑戦したい」
 
 
 
東京工芸大学(所在地:東京都中野区・神奈川県厚木市/学長:若尾 真一郎)は、2013年1月28日~1月30日の3日間、音楽を聴くことが好きな12歳~39歳を対象に、「ボーカロイドに関する調査」をモバイルリサーチ(携帯電話によるインターネットリサーチ)で実施、1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力会社:ネットエイジア株式会社)
 
東京工芸大学芸術学部インタラクティブメディア学科(人に反応する「双方向」「参加型」の新しい表現方法による創造を専門とする学科)では、2012年4月に作詞・作曲の演習用ソフトウェアとしてVOCALOID3を導入しました。また、3月27日にはどなたでも参加できるイベントとして「虹原ぺぺろんVOCALOID作曲実演イベント」を開催します。本学で特別講師として学生への制作指導も行う有名ボカロP・虹原ぺぺろん氏の曲作りのポイントやコツを通してボーカロイドでの楽曲制作の魅力をご紹介します。そこで、今回の調査では、ボーカロイドなどを利用した“能動的な音楽の楽しみ方”についての意識や実態を探りました。
 
※VOCALOID™(ボーカロイド)とは、ヤマハ株式会社が開発した音符と歌詞を入力するだけで歌声を作成することが
できる歌声合成技術、および、その技術を応用したソフトウェアの総称です。
※VOCALOID(ボーカロイド)およびボカロはヤマハ株式会社の登録商標です。
 
 
「ボーカロイドに関する調査」 調査結果
 
== 音楽の楽しみ方とボーカロイド曲 ==
◆ 「好きな音楽はボカロ曲」10代女性で4割
◆ 音楽購入のきっかけは「動画共有サイト」25.4%、10代では「TVやラジオ」と同程度の影響力
◆ 音楽の作編曲 「好き」が20.4%、ソーシャルメディアの発信を好む層では26.6%
 
はじめに、音楽を聴くことが好きな12歳~39歳の全対象者(1,000名)に対し、音楽の楽しみ方についての質問を行いました(図は5ページ以降にまとめて掲載しています)。
 
好きな音楽のジャンルについて聞いたところ、「ポップス・J-POP」が最も高く(83.0%)、次いで「アニメソング」(38.3%)、「ロック」(37.2%)、「ヒップホップ・ラップ」(26.4%)が続きました。図 1
また、「ボーカロイド曲」(17.4%)は上位8位に挙がり、ボーカロイド曲を好む割合は若年層、特に女性で高く、10代女性では4割(40.0%)が好きな音楽のジャンルとして挙げています。図 2
続いて、最近1年間に音楽を購入するきっかけとなったものを聞いたところ、「好きなアーティストの新譜が出て」が48.5%で最も高く、次いで「ラジオやTVで気に入って」33.6%、「動画共有サイトで試聴して」25.4%が続きました。「最近1年間に音楽を購入していない」との回答も2割(19.8%)見られました。図 3
また、動画共有サイトに注目すると、音楽の購入においては今やラジオやTVなどのマスメディアに次ぐ影響力を持っているようで、特に10代にはその傾向が強く、ラジオやTVをきっかけに購入した割合(32.5%)と動画共有サイトがきっかけとなった割合(33.0%)とが同程度になっています。図 4
別の質問結果では、《動画共有サイトで動画を見ること》が『好き』(「非常に好き」+「やや好き」、以下同様)と答えた割合は全体の9割(90.3%)に達しており、この結果からも、今回の調査対象者である“音楽を聴くことが好きな層”に対して、動画共有サイトの影響力が高まっていることが窺えます。図 6
 
次に、音楽の演奏と作編曲について聞いたところ、《音楽を演奏すること》が『好き』な割合は45.4%、《音楽を作ること※編曲も含む》では20.4%となりました。また、音楽の作編曲を好む割合は、ボーカロイド曲を好む層(29.3%)や動画共有サイトの閲覧を好む層(21.4%)、ソーシャルメディアでの発信を好む層(26.6%)などで高くなる傾向がみられました。動画共有サイトなどに投稿された、他人が制作したボーカロイド曲をきっかけに、“自分も音楽を制作して発表したい”と制作意欲を喚起されたためか、音楽をより能動的に楽しむようになったことが窺えます。図 5 図 7 図 8 図 9
 
 
== ボーカロイド曲について ==
◆ ボカロ曲の認知率67.6%、うち「カラオケで歌ったことがある」23.5%
◆ ボカロ曲を使ったゲーム 4人に1人がプレイ経験あり
◆ ボカロ曲の魅力は「多様な曲がある」「無料で聴ける」「ボカロならではの表現」
 
ボーカロイド曲や音楽制作に関連する言葉の認知の程度を聞いたところ、《ボーカロイド曲(ボカロ曲)》を「どのようなものか知っている」は41.1%、「名前は知っている」26.5%となり、それらを合計した認知率は67.6%となりました。そのほか、《同人音楽》(34.3%)や《ボカロP》(32.6%)は3割台、《DTM(デスクトップミュージック)》(26.7%)は2割台の認知率となっています。図 10 図 11
 
次に、ボーカロイド曲という言葉を認知している方(676名)にボーカロイド曲に関する経験と意向について聞いたところ、《ボーカロイド曲を聴いたこと》の項目では「経験がある」が63.8%、「経験はないが、今後してみたい」が9.3%となりました。ボーカロイド曲を聴いた経験のある割合は10代(69.0%)や20代前半(71.9%)で高くなり、30代前半・後半は「経験はないが、今後してみたい」の割合(30代前半12.1%、30代後半15.5%)が他の年代よりも高くなりました。図 12 図 13
そのほか、《ボーカロイド曲をカラオケで歌ったこと》の項目では「経験がある」が23.5%、「経験はないが、今後してみたい」が14.6%、《ボーカロイド曲を使ったゲームで遊んだこと》では「経験がある」が24.4%、「経験はないが、今後してみたい」が18.2%となるなど、様々な方面に商業展開を始めたボーカロイド曲についても、徐々に親しまれ始めている様子が窺えました。図 12 図 14 図 15 図 16
 
また、ボーカロイド曲を聴いた経験のある方(432名)に対し、ボーカロイド曲のどんなところを魅力に感じるか聞いたところ、上位回答には「いろいろなジャンルの曲がある」(43.2%)や「(動画共有サイトなどで)無料で曲を聴ける」(41.8%)、「生身の人間では歌えないような曲の表現」(40.1%)、「ボーカロイドのキャラクター」(39.2%)といった回答が挙がりました。図 17
また、音楽の作編曲を好む層では、「音声合成技術」(49.2%)や「二次創作がしやすい」(43.2%)、「ユーザー(個人)同士が楽曲を提供している」(43.2%)などの項目が高くなりました。作り手側は、音声合成技術そのものや、一部の楽曲や“初音ミク”などのキャラクターで非営利二次利用が許可されている環境にも魅力に感じているようです。図 18
 
== ボーカロイドのキャラクターについて ==
◆ 初音ミクの認知率95.0%
◆ “ポスト初音ミク”は「Megpoid」?「IA」?若年層で認知が広がる
◆ 初音ミクを知ったきっかけに年代差、30代は「TV」が4割強
 
ボーカロイドには、そのソフトで利用できる歌声ごとに様々な製品が登場しており、多くの製品にはその歌声にあったシンボルキャラクターが設定されています。ボーカロイド曲においてはその製品名(キャラクター名)が楽曲の歌手として認識され、キャラクター自身もボーカロイド曲の人気の要因となっています。そこで、ボーカロイドの代表格である《初音ミク》の認知の程度を聞いたところ、「どのようなものか知っている」は56.4%、「名前は知っている」は38.6%と、それらを合計した認知率は95.0%となりました。年代別で見ても、10代から30代全てで9割超の方が認知しているようで、広く認知されている様子が窺えます。図 19 図 20
 
また、初音ミクや鏡音リン・レンなど、多数の人気キャラクターを産んだ製品群の次世代にあたる、VOCALOID3シリーズの中で、昨今注目を集めつつある《Megpoid(メグッポイド)》、《IA(イア)》、《蒼姫ラピス(アオキラピス)》の認知の程度を合わせて聞いたところ、声質の違いなどで複数のバージョンが発売されている《Megpoid》の認知率が23.7%、VOCALOID3で初登場し、透明感のある声質が話題となった《IA》の認知率が17.5%、スマートフォン(iOS)アプリも登場した《蒼姫ラピス》の認知率は12.3%となりました。これらの製品(キャラクター)の認知率は音楽の作編曲を好む層や若年層で高く、今後、このような製品の中から“ポスト初音ミク”が誕生することもあるかもしれません。図 19 図 21 図 22 図 23
 
続いて、初音ミクを知っている方(950名)に、初音ミクの認知経路を聞いたところ、「動画共有サイト」が36.5%で最も多く、僅差で「TV」(34.2%)が続きました。図 24
動画共有サイトを介して初音ミクを見知った割合は10代(42.4%)や20代前半(53.2%)でより高く、TVを介して見知った割合は30代前半(41.7%)や30代後半(42.0%)で高くなりました。図 25
この結果について、ボーカロイド技術の開発元であるヤマハ株式会社に意見を伺ったところ、「2010年に行なった街頭調査では、初音ミクを知っている方は6割半程度、30代では5割に達していませんでした。また、TVやラジオを見て知った、という方は当時1割もいませんでした。」とのことでした。動画共有サイトで若年層を中心に盛り上がりを見せた後、UGC(自主制作コンテンツ)の成長事例としてTVなどのニュースで取り上げられたことで、より認知を広めていった様子が窺えます。
 
 
== 音楽制作について ==
◆ 気に入った無料コンテンツ制作者への少額寄附意向56.5%、ボカロ曲ファンでは77.6%
◆ 4人に1人がボカロ曲制作やDTMに「挑戦したい」
◆ 3人に1人がゲーム感覚で音声合成のできるアプリの利用意向あり
 
現在は、動画共有サイトなどのソーシャルメディアを利用して、誰もが気軽にコンテンツを発信することができるようになった反面、無料で楽しめるコンテンツがインターネット上には溢れ、コンテンツが売れなくなったとも言われます。そのような状況下、コンテンツの利用者は、無料でコンテンツを公開している制作者に対して金銭的な支援をすることをどのように考えているのでしょうか。
 
全回答者(1,000名)に対し、気に入った無料コンテンツ制作者に対して、少額のお金を寄附してもいいと思うか聞いたところ、「積極的に寄附したいと思う」が4.5%、「寄附をしてもいいと思う」が52.0%と、合わせて56.5%は寄附の意向があることがわかりました。
また、ボーカロイド曲を好む層では、寄附の意向は77.6%とより高くなっています。楽曲の制作者やイラストや動画などの二次創作者、それらのファンなど、ユーザー(個人)が成長を牽引してきたボーカロイド曲の愛好者たちの中には、コンテンツの作り手を支援したい・してもよいと考えている方が増えてきているようです。図 26
 
当初、ボーカロイドソフトはDTM(パソコンを使った音楽制作行為)愛好者向けの専門的なソフトという位置づけでしたが、ボーカロイド曲の人気は音楽制作人口の増加にも寄与するのでしょうか。
作編曲に関連する機能やソフトについて、利用経験と今後の意向を聞いたところ、《携帯電話の着メロを作成する機能やソフト》では「使った経験がある」が20.5%と2割となりましたが、その他の音楽制作・編集ソフト・アプリでは、利用経験率は1割以下となりました。まだまだ音楽編集ソフトなどの利用が拡大しているとは言えない状況のようですが、今後挑戦したいと考える方は多いようで、《DAW/DTMソフト(音楽編集・作成ソフト)》では「経験はないが、今後挑戦したい」が23.3%、《ボーカロイドソフト(歌声合成ソフト)》では25.1%と、およそ4人に1人の割合となっています。また、ボーカロイド曲を好む層では、これらの利用経験、挑戦意向がより高くなっており、ボーカロイド曲が音楽制作に興味を持つ入り口になっていることが窺えます。図 27 図 28 図 29 図 30
また、スマートフォンやタブレット端末の音楽編集・音声合成アプリでは、「経験はないが、今後挑戦したい」とする割合が他の項目よりも高く、《スマートフォン・タブレット端末の音楽編集アプリ》では32.3%、《ゲーム感覚で音声の合成ができるアプリ》では32.5%と、およそ3人に1人の割合で挑戦したいと考えていることがわかりました。直感的に操作できるアプリや、ゲーム感覚で音声の合成を経験できるアプリなどによって、制作に参加する敷居を低くすることで、今後、音楽制作を楽しむユーザーが増えていく可能性が窺えました。図 27 図 31 図 32
 
※リサーチ結果は、下記URLでも公開しております。
http://www.t-kougei.ac.jp/guide/release/
 
本学教員コメント 「ボーカロイドに関する調査」について
東京工芸大学芸術学部インタラクティブメディア学科教授の久原泰雄(専門分野:サウンドアート)は、今回の調査結果について次のように述べています。
 
 歌声合成技術は昔から研究されていて、決して目新しくはないですが、ボーカロイドの社会的影響は音楽産業の構造を変えるほどのインパクトがあります。ボカロ曲は動画投稿サイトで誰もが自由にアップロードやダウンロードして広がっていきます。権利で縛られた窮屈なコンテンツではなく、自由に二次利用できる作り手と見る人に優しい環境で創造がリサイクルされていきます。「XXに歌わせてみた」や「XXを歌ってみた」などの二次創作は作り手だけでなく、見る人の意欲を刺激し、創作の連鎖反応を誘発します。誰でも音楽を聴くことは好きですが、作曲となると敷居が高くなります。ボーカロイドは歌詞とメロディを入力し、歌声ライブラリに歌わせて曲を作っていきます。音楽理論を知らなくても、メロディは誰にも心の中に育まれており、この心のメロディをボーカロイドという新しい音楽語法によって表現し、作曲するのです。ボカロ曲が作曲を始めたいという動機付けの要因になっていることも不思議ではありません。今後、作り手層が拡大し、個性的なコンテンツが続々と創作・発信されることが期待できます。
 
《虹原ぺぺろんVOCALOID作曲実演イベント概要》
日 時          2013年3月27日(水)  15:00~16:00
会 場          東京工芸大学中野キャンパス  1号館
                  東京都中野区本町2-9-5  中野坂上駅より徒歩約7分
お問い合わせ先  東京工芸大学広報課: 046-242-9600
                  観覧無料・予約不要です。当日会場にお越しください。
※当日は東京工芸大学スプリングスクール(高校生向け/予約制)を開催しています。その一環として開催されますが、本イベントに限り、どなたでも予約無しでご参加いただけます。
 
 
◆調査概要◆
◆調査タイトル :ボーカロイドに関する調査
◆調査対象 :ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする
音楽を聴くことが好きな12歳~39歳
(10代、20代前半、20代後半、30代前半、30代後半、男女各100名にて割付)
◆調査期間 :2013年1月28日~1月30日
◆調査方法 :インターネット調査(モバイルリサーチ)
◆調査地域 :全国
◆サンプル数 :1,000サンプル(有効回答から1,000サンプルを抽出)
◆実施機関 :ネットエイジア株式会社
  調査協力会社 :ネットエイジア株式会社 担当:安高(アタカ)
 
 
■■報道関係の皆様へ■■
本ニュースレターの内容の転載にあたりましては、「東京工芸大学調べ」と付記の上、ご使用くださいますよう、お願い申し上げます。
 
■■本調査に関するお問合せ窓口■■
東京工芸大学 学事部広報課
担当 : 田川、林、栗原
電話 : 046-242-9600/ FAX 046-242-9638  e-mail : university.pr@office.t-kougei.ac.jp
 
■■東京工芸大学 概要■■
東京工芸大学は、1923年(大正12年)、当時メディアの最先端であった我が国最初の写真の専門学校として設立されました。近年、工学部と芸術学部の2学部からなる特色ある4年制大学として、我が国初のアニメーション学科を創設し、更に2007年4月には東日本初となるマンガ学科を増設するなど、常にメディア芸術・コンテンツ芸術の発展に先導的役割を果たしてきました。
現在は、「工学×芸術=∞(無限の可能性)」という考え方のもとで工学部と芸術学部の様々な連携教育及び活動を進めており、創造性とオリジナリティーあふれる人材を育成しています。
 
理事長・学長
学校法人東京工芸大学 理事長 岩居文雄(いわい ふみお)
東京工芸大学 学長  若尾真一郎(わかお しんいちろう)
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設置学部・大学院等 (学生数4,597名:2012年5月1日現在)
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